「無縁社会の取材現場から」で板垣氏が講演
2月2日(土)に長野県社会保障推進協議会第18回総会・記念講演「無縁社会の取材現場から」が長野市で開かれ、「無縁社会」
という言葉を世に送り出した一人である板垣淑子さんを講師に招き、110名を超える参加者があり、県保険医協会からは林常任
理事と事務局が参加した。
近年、核家族化、不安定雇用による未婚化、熟年離婚等により、人と社会とのつながりが希薄になっている。社会とのつながりを失ったとき人は無縁死の危険に晒される。社会では死んだ人が誰なのか分からない人を行旅死亡人として取り扱うが、このような行旅死亡人が増加の一途を辿っている現状を知った板垣さんは「無縁社会」という言葉にいきついたという。
講演会の中で板垣氏は、家族や身寄りがいない人の多くが自分の老後や死後のことを心配していることを事例も交え語ってくれた。実際に死後の火葬・埋葬・納骨を頼める人がいないため、それらを一式生前契約できるNPOに今人々が殺到しているのだという。
契約に訪れている方は裕福な人ばかりではなく、日々質素に暮らして契約金を捻出している方も多いそうだ。契約を済ませた後は皆笑顔で、「これで人様に迷惑かけずにすむ」と帰って行く光景を目にして、人に助けを求めず自分で何とかしようとする高齢者が多くいる現実に疑問を感じたそうだ。
高齢者を支えていく制度が十分に構築されていない現状では、制度と現実の隙間を埋める地域社会がとても重要であること。自分が生きているサインを、誰か一人でもいいから受け取ってもらうこと。知恵と工夫でお金のかからないセイフティーネットを社会に張り巡らし、無縁社会と向き合っていく必要があると語ってくれた。板垣さんは今後も取材を通じて、日本の社会保障制度の前提として家族福祉がある現制度を、一人暮らしの高齢者にも柔軟に対応できる制度へ改変するよう訴えていきたいと講演を締めくくった。