生活保護法関連2案が廃案
第183通常国会で提出された生活保護法改正案と生活困窮者自立支援法案の生活保護法関連2案は、国会会期末の6月26日に審議未了、廃案となった。参議院本会議で安倍首相の問責決議が可決され、本会議がストップし、厚生労働委員会も開催不能となったためだ。前日までは、問責決議は棚上げし重要法案を成立させる合意がされたとの報道もされていたが一転して、廃案となった。
廃案となった法案は6月4日には衆議院を通過していたが、生活保護の申請に文書を義務付ける一方で、家族・親族に「扶養しない理由」について説明義務を課すなど多くの問題が指摘されていた。
当初の「改正」案では、生活保護申請に際し、「要保護者の住所及び氏名」に加え「要保護者の資産及び収入の状況」等、「厚生労働省令で定める事項」を記載した申請書を提出するとともに保護の要否判定に必要な「書類を添付しなければならない」としていた。
また、保護の実施機関が要保護者の扶養義務者その他の同居の親族等に対して「報告を求めることができる」とし、保護の開始決定をしようとするときは、あらかじめ扶養義務者に対して「厚生労働省令で定める事項を通知しなければならない」と規定し、扶養義務が要件化されていた。
現行では口頭による申請は認められ、扶養も要件ではなく、書類不備や親族の扶養などを理由に申請を受け付けない、いわゆる「水際作戦」は違法とされている。それでもなお「水際作戦」によって必要な保護が受けられない事態が続発し、餓死に至る悲惨な事件も各地で起きている。
衆議院での採択にあたり、申請手続きに関しては「特別な事情があるときは、この限りでない」とする条文修正は行われが、違法な「水際作戦」を助長しかねない点ではなお問題が残る。また、扶養義務を要件化することで居場所を知られたくないDV 被害者や家族に迷惑がかかることを恐れる生活困窮者が申請をためらう事例がさらに増えることになりかねない。
さらに、医療扶助では指定医療機関の「指定(取消)に係る要件の明確化」や「指定の更新制の導入」などで指定医療機関への締め付けを強化して制限を加えている。生活保護の受給者に後発医薬品の使用を促すことを明文化し、医療に不当な差別が持ち込まれることも看過できるものではない。
生活保護受給世帯の8割は、医療扶助を利用して治療を行っており、申請しにくい制度や医療扶助の制限は受給者の生命にも関わるものである。そもそも日本の生活保護の「捕捉率」は国際的にみても2 割程度と低く、必要な世帯に生活保護がいきわたっていないことが問題である。
こうした立場から長野県保険医協会では、議員要請等を通じて法案廃止を訴える運動を続けてきた。