長野県地域医療構想 素案示される(第4回地域医療構想策定委員会)
9月2日、第4回長野県地域医療構想策定委員会が開催され、長野県地域医療構想の素案が提示された。構想案は県内の必要病床数の推計値として、昨年7月1日時点で稼働していた18,519床に対し、2025年には16,839床が必要になるとしている。この推計は「医療機関所在地ベース」で行われており、国が発表している推計値をほぼ踏襲している。2015年の稼働病床数からは1,680床の減少であり、2015年度に19,769床だった許可病床数からは2,930床の減少となる。各医療圏ごとの内訳は下表の通り。
なお、必要病床数の推計は、昨年度の調査により把握した2014年度以降の医療機関の取組みが、構想区域間の患者流出入に影響を与えると考えられるものについて調整が行われる。
○必要病床推計値「数字の独り歩き」懸念強く
構想案では「県による病床数の削減目標といった性格をもつものではない」という点が強調されている。しかし、「数字の独り歩き」に対する懸念は委員の中でも依然根強く、算出された数値は慎重に取り扱う必要があるという点があらためて確認された。
厚労省はこれまで病床機能報告制度における「病床機能の選択」について「医療機関の自主的な選択による」としており、前述のように必要病床数の推計においては県側からも「現在稼働中の病床を削減する権限は県には無い」と説明されているが、委員からは将来的にはそうした文言も変化していくのではないか、と憂慮する声が多数上がっている。必要病床の推計値だけでなく、今回示された取り組みが何らかの強制力を持つ可能性や、規範化していく可能性に留意し、注意深く見守っていきたい。
○推計値の「現実離れ」
構想の中では「医療圏間の患者の流出入を改善する施策」のひとつとして「医師の確保」が位置づけられている。この日、県事務局からは「医療提供体制が整えば病床は稼働し、患者の流出入状況も変わってくるであろう」との説明がなされたが、医療・介護従事者の確保は現状では難しく、新専門医制度による医師の流出も懸念される。また、委員からは「患者にとっては佐久医療圏と上小医療圏などは実質的に一つの医療圏として機能しており、“推計値”はやや現実離れしている」「患者の住所と勤務先が二つの医療圏にまたがる場合、患者は勤務先の医療圏で受診する傾向がある」との指摘があった。行政区域をもとにつくられた2次医療圏によって患者の流出入を把握することは難しく、患者の実際の受診行動を反映しているとは言いがたい。
○今後の動き
今回の策定委員会で構想はおおむね素案どおりに進めることが確認されたが、構想には「看取り」に関する項目を含めるべきであるとの提案がなされた。
構想は、素案に今回の策定委員会で出された意見を加えて修正・整理され、県民意見の募集、残り2回の策定委員会を経て本年度末までの策定をめざす。なお、12月までに複数回行われる地域医療構想調整会議で構想区域ごとの施策が検討され、意見が策定委員会へ報告されることとなっている。
長野県地域医療構想(素案)
資料は下記の県公式ホームページからも閲覧可能。
長野県地域医療構想策定委員会