長野県地域医療構想(案)へパブリックコメント提出

本日、県保険医協会では長野県地域医療構想(案)に対して下記のパブリックコメントを提出しました。 長野県地域医療構想(案)への意見募集 (県ホームページへ) 長野県地域医療構想(案) 長野県地域医療構想(案)の概要

長野県地域医療構想(案)への意見

1、病床数の必要量の推計 2025年の医療需要と病床数の必要量の推計方法については、県の策定委員会でも推計方法に関する疑問が多数上がっていたが、国が示している推計値は2013年度のレセプトデータに基づき、入院受療率を人口推計に当てはめただけの机上の空論といえる。 現状でも病床不足や費用など諸事情により入院が必要な患者すべてが入院できているわけではない。こうした前提に立った推計では地域住民にとって必要十分な医療が提供できないこととなる。 また、医療機能を4区分としそれぞれの推計値も同時に示しているが、この数値についても、医師確保の問題を含めて地域の現状とは乖離している。 2、推計値は参考値であると記述している点 地域医療構想の本質は全国一律の計算式で2025年の病床数を推計し、推計値に収斂させることにより都道府県ごとの医療費適正化(抑制)を推進することである。 長野県の構想(案)では、推計値は「一定の仮定に基づく推計」で「参考値」であることを随所で強調しているが、1に掲げたように数値の信頼性に乏しいものを参考値とはいえ記載する必要はない。こうした数値は誤った施策の指標となりかねない。 3、病床削減に関する県知事の権限 法令上は県に稼働病床については削減の権限がないとされており、構想案にもその旨記載されている。しかし、非稼働病床については、公的病院(県立病院、自治体病院、日赤、厚生連など)に対して削減命令ができ、民間病院に対しても要請することができる。 また、機能分化に向けて公的病院へ指示、民間病院へは要請することができるなど、県知事の権限は法令上強化されている。 長野県では公的医療機関の比率が高く、各医療圏において地域医療の中心的役割を果たしている公的病院が優先的に病床削減の対象とされる形であり県民に不安感を与える。長野県としては病床削減の命令、指示、要請等は行わないことを宣言し、地域住民のために必要病床を確保する姿勢を強く打ち出すべきである。 4、療養病床の入院患者のうち医療区分1の患者の70%が在宅としている点 療養病床の入院患者のうち医療区分1の患者の70%は在宅医療等とした点についてその根拠はなく、十分な受け皿の整備無しに病床削減のための機械的な試算といえる。 在宅で療養できる環境整備、医療や介護の診療報酬上の評価の充実など具体的な施策が示されないままに在宅への移行をすすめることは非常に危険である。 5、地域医療構想策定のプロセスについて 地域の医療従事者や地域住民への理解と同意のないままにまず本構想が決定し、その後医療機関の自主的な取り組みを促すというのは本末転倒である。 地域の医療提供体制を考える上では、今回の国の推計値ではなく、長野県の医療実態に即したデータ収集と分析を行った上で、県民、関係団体への情報提供と意見集約が必要である。  

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