財政審が「財政健全化に向けた基本的考え方」まとめる
財務大臣の諮問機関である財政制度審議会が5月30日に報告書「財政健全化に向けた基本的考え方」をまとめた。報告書では高齢化に伴う社会保障給付の増加が財政の健全性に対する脅威と位置づけて歳出分野の取り組みの筆頭に医療・介護分野の制度の見直しを掲げている。
報告書では、公的給付範囲の見直しとしては、(1)受診時定額負担(外来受診時に1回100 円など少額の定額負担を求めること)の導入について再検討、(2)70歳以上の外来高額療養費の負担上限の見直し、(3)特許切れ医薬品の保険償還額を後発医薬品ベースで設定、上回る部分は患者負担とする制度(フランス、ドイツなどの参照価格制度)、(4)湿布、漢方薬など市販類似薬品の更なる保険適用除外、(5)評価療養の費用対効果を検証し費用対効果が低いものは保険適用から外す逆評価療養の検討、(6)介護分野での混合介護の普及・促進などをあげている。
また、医療・介護サービスの提供体制の改革では、(1)医療費の地域差の要因として病床数の偏在を取り上げ、非効率な供給が過剰な需要を誘発するとして政府が進める病床の機能分化・連携など提供体制改革を注視すること、(2)国保の財政運営責任の都道府県への移管、(3)終末期医療のあり方の見直しなどを掲げている。なお、資料では日本の特徴であるフリーアクセスや自由開業医制度についてはフリーアクセスの緩やかな制限を含む医療サービス提供体制の見直しが医療給付の抑制のための手法として挙げられている。
更に重要なことは従来の医療費適正化の取り組みは都道府県の任意な取り組みに委ねられており、医療費の地域差についても現状追認であるため形骸化していると批判した上で、麻生財務大臣が提案したレセプトデータを活用して医療費のあるべき水準を地域ごとに「支出目標」として設定することが必要だとした。これは例えば、医療費が少ない都道府県を標準集団とした上で合理的な医療需要を算定、年齢・人口構成等で補正してそれぞれの地域ごとに医療費効率化のための支出目標を設定するというもので、医療費の総額管理制度の導入に結びつく可能性がある。
「財政健全化に向けた基本的考え方」 平成26年5月30日 財政制度等審議会