患者申出療養について政府が見解示す
国会会期末直前に牧山ひろえ(参議院議員・民主党)が患者申出療養(仮称)に関する二つの質問主意書を提出していたが、6月27日に新制度について政府の見解を示す答弁書が出された。
答弁書では現在でも平均6~7か月かかる未承認薬の審査をわずか6週間の審査とすることで安全性、有効性の確認が可能かどうかといった疑問に対しては、申請主体を臨床研究中核病院に限定すること、申請にかかる事前相談を行う等で短縮が可能とした。
新制度は患者の希望により申請されるため、医療事故等が発生した場合に患者側の自己責任を理由として国等の責任が軽減されないかといった質問に対しては、事例により異なるとして一律の回答は困難だとした。また、平成25年度の保険外併用療養における保険診療分は約70.6億円あるが、新制度でこの費用がどの程度変化するか(保険財政への影響)との質問に対しても、回答は示していない。
また、牧山氏は政府が新制度を「国民会保険制度を維持して保険外療養制度の枠内で創設する」としたことについて、保険外併用療養の原則について質問している。回答書では「我が国においては、必要かつ適切な医療は基本的に保険診療とする一方、将来的な保険適用を目指す高度な医療等については、一定の要件の下、安全性、有効性等を国において確認する等により、保険外併用療養制度において、保険診療と保険外診療との併用を認めているところ」とし、患者申出療養の創設によってこの考え方を変更するものではないと明記している。その他に「保険収載がごく形式的なものにとどまらない保証はあるのか」、「保険適用に使用とのインセンティブが、低下してしまう」、「医療格差が生じる」といった質問については、新制度はあくまで現行の保険外併用療養費制度の一つである先進医療と同様の仕組みだとし、そうした指摘は当たらないとしている。
患者申出療養(仮称)はかつて規制改革会議が提案した選択療養とは異なり、国が安全性・有効性を確認すること、保険収載に向けてのプロセスが示された点で、医療関係者からも容認する声もある。しかし、困難な病気と闘う患者の選択肢を拡大するといった創設の趣旨を掲げる一方で、成長戦略では「健康産業の活性化と質の高いヘルスケアサービスの提供」といった医療の産業化、市場化に位置づけられている点を注視する必要がある。