今後の医療介護の提供体制で県政出前講座
12月6日に「長野県の今後の医療・介護サービスの提供体制改革について」をテーマに県政出前講座が開催された。長野県医療団体連絡会 (県保険医協会、県民主医療機関連合会、県医療労働組合連合会、県難病患者連絡協議会)及び県社会保障推進協議会の主催で県健康福祉部の医療推進課、介護支援課の担当者が講師にあたった。
講座の内容としては本年6月の医療介護総合法の成立により長野県の医療・介護提供体制が大きく変わろうとしており、病床機能報告制度とそれに基づく地域医療ビジョンの策定や新基金及び地域包括ケア体制について説明を受けた。
病床機能報告制度は運用を開始しており、11月には7月1日現在の医療機能と6年経過後の医療機能の予定などが報告されている。これらに基づき県では二次医療圏等ごとに地域医療ビジョンを策定することになるが、国では現在ガイドラインの策定にあたっての検討を行っている最中であり、策定のプロセスや医療需要の将来推計や各医療機能の必要量の推計方法などが3月に示されるガイドラインに盛り込まれる予定との事であった。県では来年4月から2年間かけて2025年の医療需要と目指すべき医療提供体制を描いていくことになる。
消費税増税分を財源とする新たな基金は、地域医療再生基金の後継としての位置づけであり、本年度分について長野県は15.3億円(国:10.2億円、県5.1億円)で県の補正予算で審議されているが、本年度は病床の機能分化、在宅医療の推進、医療従事者の確保・養成を中心に具体的に計画されている事業の内訳も資料提供された。来年度については介護分野も対象となるが、本年度と同等の規模の基金額となるかどうかは現在のところわからないという。
地域包括ケアシステムについては、各市町村の取り組みと課題を把握するために10月に実施したアンケート調査の報告がされ、半数以上の自治体がその方向性を検討中ということであった。課題として、地域にあったシステムのあり方を明確にする方法がわからないといったことを上げ、システム構築の上で重要な分野として、医療・介護の連携と生活支援サービスの充実の回答が多い。また、地域ケア会議は未開催の自治体もあり、医療関係者の参加が重要であると県担当者は指摘した。生活支援サービス体制については、供給体制が足りていないという自治体が8割を超える。こうした調査を元に県では具体的な指標を設定し、当面はやれているか、やれていないかといった定性的な観点で整備状況を確認しつつ、グラフや一覧表やマップにより重点的な支援を考えていくといった見解を示した。最後に県内の取り組みをいくつか紹介しつつ、佐久市の取り組みが国のすすめるイメージに近いとした。
質疑応答では参加者から医療費抑制を目指す厚生労働省が示す医療需要や医療機能の必要量の推計方法が機械的に当てはめられるのではなく地域医療の実情を踏まえるべきだとの意見、地域医療ビジョンにおける協議の場の具体的な運営方法、病床転換や休眠病床の削減に対する県の権限が強化されたことに対する不安、新基金の公募方法や事業内容、時期などについて質問が相次ぎ、県担当者は国からの情報に限りがあるとしながらもそれぞれの質問に丁寧に回答した。
県医団連では来年6月に医療と介護を考えるシンポジウムを企画しているが、引き続き地域医療ビジョン策定や地域包括ケアシステム構築の進捗状況を確認するとともに、必要な提案も行っていきたいと考えている。