結成のつどいに500人が参加/介護保険をよくする信州の会
11月29日、県保険医協会が運営団体として参加する、「介護保険をよくする信州の会」(以下「信州の会」)は安曇野スイス村サンモリッツで「結成のつどい」を開催、介護、医療関係者や一般市民ら約500人が参加した。信州の会は、昨年10月に開催したシンポジウムの実行委員会の構成団体を中心に本年8月に設立、現在設立趣旨に賛同する団体、個人の参加を呼びかけている。今回の集会は、6月に成立した医療介護総合推進法で介護保険制度の給付抑制や利用者負担増などが具体化されようとする中で、介護保険を実態に即したより良いものとするためのスタート集会といった位置づけである。
開会にあたり、関副代表(認知症の人と家族の会)から信州の会の設立経過と目的が話され、「地域から声を広めていこう」と挨拶した。
前半は「介護保険の根本を問う」と題して、相澤與一氏(福島大学名誉教授)が講演、介護保険制度は全額公費であった措置制度を利用者の自己負担と保険料で賄う保険制度としたもので公費負担を国民の保険料負担と応益負担に転嫁、金持ちを優遇し貧しい人をいじめる制度だと批判した。
後半は、信州の会の代表である合津長野大教授の進行で、4人のシンポジストからの報告とフロアとの意見交換が行われた。
介護者の家族の立場から島田氏は夫婦がそれぞれの親を介護する家族介護の苦労、要支援のサービスカットや施設入所の制限などの法改正で今後の不安について発言、勉強しながら声を大にして訴えていきたいと述べた。
介護福祉士である松本氏は現場が抱える深刻な人材不足がサービスの質の低下を招くとし、本来してあげたいことができないといった苦悩や低賃金で仲間が離職していく現場の実態を語るとともに、介護職員の医療行為を制度化した国の方針に対して介護職の専門性とは何かと疑問を呈した。
安曇野市の介護保険等運営協議会委員でもある塩原氏(信州の会事務局長)からは、第6期の介護保険事業計画策定を巡る市町村の動向などが報告された。国が進める地域包括ケアシステムについて県が示すイメージ図などを示し、絵に描くのは簡単だが、策定する市町村は大変であり、会議でも「ボランティア団体に丸投げされては困る」、「福祉は本来行政がやるべきだ」との意見が上がっていることなどが紹介された。また、多くの自治体担当者も国の施策に対して全面的に賛成しているわけではなく悩みながら取り組んでおり、一緒に国に要望するといった姿勢も大切だとした。
飯田・下伊那地域で「介護保険制度をよくする飯伊の会」を立ち上げた福澤氏からは地域での活動報告があった。国がやろうとしていることは簡単に言えば医療と介護を安上がりのものとすることだが、まずは学習をして制度を知ることが大事であると強調し、勉強して課題を見極め、それを事業者や利用者に問いかけ、行政に働きかける活動を粘り強くしていきたいと決意が語られた。
フロア発言も活発で、要支援の介護保険給付外しについては、「サービス維持のためには国費が必要だと自治体でも苦労している」、「認知症は初期に専門職の対応が必要だが困難になる」、「ボランティアでは要支援者の受け皿、デイサービスの代わりにはなり得ない」などの意見が出された。また、介護保険優先で障害者福祉が後退しているといった弊害、国の指針の遅れで町村部では介護保険事業計画の策定が遅れているなどの実態の報告もされた。
合津代表はシンポジウムのまとめで今日の集会が会のスタートであり、地区ごとの学習、集会などを通じて意見を集約し、それを行政に伝え必要があれば一緒に国に働きかけたいと今後の活動の方向性を示した。
最後に尾台副代表(松本短期大学教授)は今日の集会で歩むべき方向性が確認できた。これを出発点に活動していくので協力いただきたいと参加者に会への賛同を呼びかけ閉会した。